開業届とは、個人事業を開業したことを税務署に届け出る書類のことです。青色申告で確定申告する場合は必ず提出しなければなりません。
また、開業届のほかにも、事業開始等申告書や事業によっては許認可など必要な書類や手続きがあります。
本記事では、開業届や事業開始等申告書をはじめ、開業時に提出が必要な書類や開業届の記載項目について解説します。必要となる書類を把握して、スムーズに開業できるようにしましょう。
開業時に必要な書類
個人事業主として事業を開始した際には、税務署に開業届を提出します。
開業届は正式名称を「個人事業の開業・廃業等届出」といい、開業時以外の事務所や事業所を新設・増設・移転・廃止したときにも、その変更内容を記載した届出を提出する必要があります。
そのほかにも、都道府県税事務所に提出する事業開始等申告書や、開業する事業によっては許認可を取得し提出しなければなりません。
ここからは書類別に詳しく解説します。
開業届(個人事業の開設・廃業等届出)
開業届は原本と控えの計2枚を税務署に提出します。記載項目については、記事内「開業届の書き方」にてご確認ください。
開業届は、開業の事実があった日から1ヶ月以内に提出することが推奨されていますが、遅れたり提出をしなかったりしても罰則などはありません。
ただし、確定申告を青色申告で行う場合は、その年の3月15日までに青色申告承認申請書とともに所轄の税務署へ提出が必要です。
なお、開業届を提出する際には、マイナンバーカードもしくはマイナンバーがわかる確認書類(個人番号通知書やマイナンバーが記載された住民票など)と、本人確認書類が必要になるので忘れずに持参しましょう。
事業開始等申告書
事業開始等申告書とは、各都道府県の税事務所に事業を始めたことを申告するための書類です。
開業届が所得税や消費税など国税に係る届出であるのに対し、事業開始等申告書は個人事業税という都道府県税に係る届出です。そのため、事業開始等申告書は税務署ではなく、各都道府県の税事務所に提出します。
書類の名称や様式や提出期限は各都道府県によって異なるため、各自治体の窓口または自治体のホームページで確認しましょう。
なお、所得税の確定申告を行っている場合には、個人事業税の申告を別途行う必要はありません。
開業届と同様に事業開始等申告書を提出しなくても罰則などはありません。ただし、個人事業税の課税対象になった場合(事業所得が290万円以上)には、各都道府県税事務所から個人事業税の納税通知書が送付されます。
【ケース別】開業届と一緒に提出する書類
個人事業主の状況に応じて、開業届を提出するタイミングで一緒に税務署へ提出すべき書類があります。
ここからは書類の概要について、提出が必要なケース別にあわせて解説します。
青色申告承認申請書
青色申告承認申請書とは、青色申告で確定申告をするための申請書で、正式名称は「所得税の青色申告承認申請書」といいます。
確定申告を青色申告で行う場合、その年の3月15日までに開業届と一緒に所轄の税務署へ提出が必要です。
確定申告を行う年の1月16日よりあとに開業届を提出した場合には、開業届を提出した日から2ヶ月以内に提出すれば問題ありません。
青色申告承認申請書を提出をしていない場合は自動的に白色申告となります。
freee開業では、開業届と青色申告承認申請書を無料で一括作成、オンライン提出が可能です。スマホからでも対応可能で税務署へ行く必要もありません。効率的に手続きを進めたい個人事業主の方はぜひご活用ください。
開業届の提出手順
開業届の準備から提出までの手順は以下のとおりです。
開業届を作成する
開業届を入手して作成します。開業届は管轄の税務署で直接または国税庁のホームページからダウンロードすることで入手できます。
開業届は、紙の書類に手書きするか、e-Taxをとおしてパソコンで入力することも可能です。ただし、手書きの場合は、必ず開業届とその控えの2枚を作成しましょう。
税務署に提出する
開業届の提出方法は、税務署に直接・郵送・オンラインの3通りです。
税務署に直接届ける場合は、上述した必要書類を揃えて提出し、受領印が押印された開業届の控えを受け取りましょう。
郵送の場合は、必要な書類をまとめて送付します。このとき、開業届の控えを受け取るために、返信用封筒と切手を忘れずに同封しましょう。
税務署の営業時間
- 8時30分から17時まで
- 閉庁日(土・日曜日・祝日等)
- 郵送または時間外収受箱への投稿は可能
開業届はe-Taxからオンラインで申請することも可能です。ただし、e-Taxの利用には利用者識別番号の取得が必要です。
e-Taxの利用可能時間
- 火曜日~金曜日
休・祝日及び12月29日〜1月3日は利用不可 - 24時間
休祝日の翌稼働日は8時30分から - 月・土・日・休祝日
メンテナンス日は利用不可 - 8時30分~24時
提出後は控えを保存する
開業届の控えは、税務署に直接提出した場合にはその場で、郵送の場合は返送で受け取れます。
e-Taxで提出した場合は、開業届を送信した際のデータと受信通知を合わせて印刷しましょう。
開業届の控えは、以下のような場合に提示を求められます。
- 事業用の銀行口座の開設に利用できる
- 融資を受ける際に事業を行っていることのの証明が可能
- 小規模企業共済への加入
- 給付金・補助金・助成金の申請
開業届の書き方
1. 税務署名・提出日
管轄の税務署名および開業届の提出日を記載します。
2. 事業主情報
納税地を選択し住所を記載します。他にも住所や事業所があればその住所を記載します。
開業届を提出する事業主の氏名・生年月日・マイナンバーもすべて記載したら押印します。
3. 職業および屋号
開業届の根拠となる事業名を記載し、屋号欄には事業や店舗の名称を記載しますが空白でも問題ありません。
4. 届出の区分
開業にチェックを入れ、事業を行う場所の住所と氏名を記載し、新設にもチェックを入れます。
5. 所得の種類
該当する所得の種類にチェックを入れます。
6. 開業・廃業等日
開業した日付を記載します。
7. 事業所等を新増設、転移、廃止した場合
開業の場合、記載は不要です。
8. 廃業の事由が法人の設立に伴うものである場合
開業の場合、記載は不要です。
9. 開業・廃業に伴う届出書の提出の有無
青色申告承認申請書および課税事業者選択届を提出する場合には、該当箇所にチェックを入れます。
10. 事業の概要
開業する際の事業内容を具体的に記載します。たとえば、カフェをオープンするのであれば、「カフェ(飲食店)の経営」のように記載すれば問題ありません。
11. 給与等の支払の状況
従業員を雇用する場合に、該当する項目に人数や給与の定め方を記載します。
12. 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書の提出の有無
従業員を雇用する場合に「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」の提出の有無に関して、該当する側にチェックを入れます。
13. 給与支払いを開始する年月日
従業員を雇用する場合に、給与支払いを開始する日付を記載します。
14. 関与税理士
顧問税理士がいるか、または開業届の提出などを依頼している場合に、その税理士の詳細を記載します。
まとめ
開業届は提出しなくても罰則などはありませんが、節税効果のある青色申告を行うためには、開業届と青色申告承認申請書両方の提出が必要です。
また、事業内容や事業の運営方法によって提出するべき書類は複数あります。
開業届をこれから提出する場合には、自身の事業内容や運営方法を具体的に把握して、どのような手続きが必要なのかを事前に確認し、実際の手続きをスムーズに進められるように準備しておきましょう。
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